伊園旬 『東京湾岸奪還プロジェクト ブレイクスルー・トライアル2』

東京湾岸奪還プロジェクト ブレイクスルー・トライアル2 (宝島社文庫)
 中東で相手からの同意を得て実験的にセキュリティを突破することで、危険を提示する仕事をしている丹羽と門脇の帰国中に、丹羽の娘の茅乃が彼女の友人とともに誘拐されるという事件が起こります。犯人の要求は、丹羽と門脇がその特殊技能をもってして、あるものを入手することでした。

 テンポ良く軽妙でリーダビリティの高いシリーズ2作目。前作から引き続いて丹羽と門脇が、そして本書では新たに瀬戸という青年が彼らの作戦に加わることとなります。
 物語は、丹羽と門脇と瀬戸の三人が誘拐された娘を奪還するために、彼らを脅迫してきた相手の要求に従い、中身の分からないケースを相手に気付かれないようにしながら奪い取る、というミッションから展開します。ケースは三つ、中国人の不動産ブローカーが身辺から離さず持ち歩いているもの、セキュリティに守られたオフィスビル内にあるもの、どこまでの防御のシステムを備えているのか分からない建設中の温室内にあるもの。そこだけでも十分に読み応えがあるものの、これらのミッションはAct1のみで完遂され、全体のボリュームにして残り半分は、誘拐された少女たちが自らの力で何とかしようと試行錯誤するとともに、一方で丹羽と門脇と瀬戸が彼女らを救出するというパートに費やされることとなります。
 和製スパイ大作戦的な面白さのAct1を導入として機能させ、少女たちの脱出・救出劇へと展開するという本作の構造は、物語全体をスッキリまとめてはいるものの、それぞれのパートがやや小粒になってしまっており、実現不可能さを感じさせる要素が薄いのは惜しいところ。また、最終局面の盛り上がりの後の伏線回収は必ずしも十分とは言えず、本作での「敵」との対決にはやや消化不良な感じがしないでもありません。
 とはいえ、これだけ多くの要素を詰め込みながらもスッキリと読ませるリーダビリティの高さや、個性的で魅力あるキャラクターなど、エンターテインメント性に富んだ作品であることには疑いないでしょう。
 続編があれば、そちらも楽しみ。