既に完結した彩雲国物語の、ライトノベルという枠では書くことの出来なかった本当の「物語の終わり」とでも言うべき連作短編集。
力技の大団円を無理矢理に迎えさせたとでも言うべき本編では、シリーズ半ば過ぎから登場人物や物語の軸にブレとでもいうべきものが出てきてしまい、少女小説という主人公の少女の官吏としての成長と恋愛物語という枠組みで収めるには、風呂敷を広げ過ぎた感があったのは否定できません。
おそらくは著者も長年に渡りこの物語を書き続けるうちに、拡散する物語世界の中で、それを担うには若い主人公たちの力不足を感じた部分もあるのでしょう。結果的にシリーズ序盤と終盤でのブレ感が現れてしまい、どうにかシリーズ本編を終わらせはしたものの、それが「物語の終わり」としては不十分だった印象はあります。
そして、そこから生まれたのが本書であり、おそらくは読者の嗜好やスタンスによって賛否両論となる本書ですが、物語世界という観点から見れば、この一冊をもって綺麗に閉じることがようやく可能になったのだと言えるでしょう。
本書は、悠舜、旺季、晏樹、劉輝という4人に焦点を当て、彼らが求めたものと喪ったものを明らかにすることで、先王時代にある物語の禍根を解き、未来へと繋げるという結末を描き出すことに成功しています。
これらの物語は、ひたすらに暗く鬱々としたものであり、本編での空気とは一線を画します。「骸骨を乞う」というタイトルも作中では、王に対して先に逝くことを赦して欲しいと申し出るというようなニュアンスで使われるものであり、自ら求め、喪い、そして遺して逝く相手に赦しを乞うという物語になります。
シリーズ本編が途中で破たんしたとも言える状況であったことは覆らないものの、物語の終わりとしての納得のいく点を見せられたという部分で、本書は一定の評価に値するべきものと言えるかもしれません。