Cradle Of Filth "Nymphetamine" (2004)

ニンフェタミン

Vo.ダニ・フィルス率いる英国の元ブラック・メタルバンドであり、ゴシックやメロデスの要素も内包する吸血鬼ブラック・メタル/エクストリーム・メタルバンド、クレイドル・オブ・フィルスの6thアルバム。
アルバムタイトルは、魔性を感じさせる女性の魅力を示す"nymphette"と、覚せい剤をあらわす"amphetamine"を掛け合わせた造語となっています。
ガチガチのブラック・メタル的な思想は既にないものの、本作もまた、独特の世界観をはっきりと感じることのできるアルバムであると言えるでしょう。ブラスト・ビートや高速のリフ、そしてVo.ダニ・フィルスの悪魔的なデス・ヴォーカルで暴虐な獣性を感じさせる部分を残しつつ、シンセサイザーを導入することで、ゴシック/シンフォニック的な劇場性を見せる音作りを成し遂げています。
アルバムごとに、全く違う手法や試みをするクレイドル・オブ・フィルスですが、どのアルバムも間違いなく「クレイドル・オブ・フィルスの世界」であることが伝わるものであり、本作もまたそのうちの1枚であるのは間違いないでしょう。

荘厳なインスト曲である#1の"Satyriasis"での幕開けに続き、暴虐性を全開にした#2や#3から、メロデス的な哀愁の漂う#4、美しいピアノの旋律を織り交ぜた#5への展開など、とにかく劇的な構成を見せるアルバム。
さらにはタイトル・ナンバーである#6の壮大な楽曲"Nymphetamine Overdose"と、そこから抜き出したボーナストラックの#14"Nymphetamine Fix"では、Leaves'eyesの歌姫リヴ・クリスティン*1がゲスト参加しており、中心メンバーでvo.のダニ・フィルスの人間離れした獣性を感じさせるデスヴォーカルと、リヴのエンジェリック・ヴォイスとの対比が素晴らしい1作となっています。
全体通して、とにかく映画的なドラマ性に満ちた1枚。

*1:このアルバムの制作当時はまだLeaves'eyes結成前であり、Theatre of Tragedyに在籍。その後2003年8月にTheatre of TragedyのVo.を突然解雇されるたことでLeaves'eyesが誕生へとつながります。