キーボードのツォーマス・ホロパイネンを中心とし、シベリウス音楽院出身の女性Vo.ターヤ・トゥルネン、ゴシックメタル・バンドのDelainなどにも参加しているベースとヴォーカルをつとめるマルコ・ヒタエラ、ギターのエンプ・ヴオリネン、ドラムのユッカ・ネヴァライネンで構成される、フィンランドの国民的シンフォニックメタル・バンド、ナイトウィッシュの5枚目のアルバムにして、おそらくは彼らが世界的に成功した最大の出世作。
どこまでもアグレッシブなメタル・バンドとしての演奏と、声量豊かでパワフルでありつつもオペラ調のターヤのヴォーカル、そして壮大なシンフォニック・サウンドの融合が一つの完成形を見せたのがこのアルバムであるということは事実でしょう。
レコーディングにはロンドンフィルも参加しており、壮大なシンフォニック・サウンドと、バンドのパワフルな演奏の競演を堪能できる一枚。
そしてこのアルバムを最後に、初代Vo.のターヤ・トゥルネンが脱退し、その後は2012年までアネッテ・オルゾンが二代目のVo.として在籍することとなります。(アネッテの脱退後は、元Afterforeverのフロール・ヤンセンがツアーのヴォーカルの代役をつとめているようです。2013年いっぱいは彼女がツアーなどでヴォーカルを担当するようですが、その先は未定とのこと。個人的には、フロール嬢であればナイトウィッシュというバンドに対する期待に応えるだけの力量も十分過ぎるほどに備えていると思いますし、ターヤ時代の曲もアネッテ時代の曲も歌えるだろう彼女をVo.に擁したナイトウィッシュを聴きたい!と思わされるので、正式加入して欲しいところ。)
美しい幕開けから疾走感あふれる展開のオープニング・チューンの#1"Dark Chest of Wounders"。
続く#2、"Wish I Had An Angel"では何と言ってもオペラティックなターヤの歌声と、パワフルなマルコのヴォーカルが絡む力強さと壮大さが聴きどころ。この曲でのマルコの格好良さはもう異常なレベルでしょう。
さらに#3の"Nemo"は、2005年世界陸上選手権ヘルシンキ大会の開会式でのパフォーマンスを披露した1曲と、序盤から捨て曲なしの飛ばしっぷりです。
アルバム中盤では#5の"Creek Mary's Blood"など、フォークロア色の濃い楽曲、そして中には中近東的なエキゾチックな曲も含まれる一方で、ロンドンフィルとの競演が見事でオペラ作品のような劇場性すら感じさせる#9"Ghost Love Score"など、非常に多様な要素が混然一体となって"Nightwish"という世界観を見せる一枚となっています。
アルバム通して終始一貫、「シンフォニック・メタル」の真髄を見せつけ、北欧メタルのビッグ・ネームとしての貫録を感じさせる一作であり、リリースから10年近くが経ってもなお格好良さを改めて感じさせられるアルバムと言えるでしょう。