荒れ果てたヴィクトリア調の邸宅を買い取って改装し、宿泊施設に再生させるのだという知り合い女性が、ジェーンとシェリィに内装の担当を依頼してきます。過激フェミニストである女性工事請負人の影響で、工事関係者もほぼ女性で固められている現場へ行けば、設計図や契約書もかなりいい加減なものでした。さらには、建物で異臭騒ぎや放火が起こるなど、不穏なことが続く中で、工事関係者の一人が死体となって発見されてしまいます。
主婦探偵ジェーンのシリーズ13作目。毎回パロディとなっているタイトルですが、今回はナサニエル・ホーソンの『七破風の家』から(原題は、作中でもしばしばジェーンとシェリイの会話に出てくる「七女子の家」"THE HOUSE OF SEVEN MABELES")。
古い邸宅という魅力的な舞台で起こる、何者かの悪意を感じさせる出来事や、いわくありげな被害者など、サスペンスとしての舞台立てはシリーズの中でも一番といっていいほどに整っています。ですが、そんな事件に巻き込まれるのはたくましい主婦二人。いつもの調子で事件の渦中に首を突っ込んでいく二人には緊張感はあまりなく、悪い意味ではなく「いつも通りのドタバタ劇」に仕上がっています。
ですが反面で、相変わらず事件の真相へと辿り着く過程はやや成り行き任せで唐突な印象も皆無ではありません。ただ、そうしたミステリとしては弱い部分を含め。個性的で癖のある登場人物たちと、それらに負けない主婦のたくましさを存分に楽しめる一作という意味では、シリーズ作品として安定の一作ではあるかもしれません。