結城光流 『吉祥寺よろず怪事請負処』

吉祥寺よろず怪事請負処

 代々庭師の家系に生まれた保は、吉祥寺でガーデンショップをの営む大叔父のところに下宿し、家事と仕事の手伝いをしながら大学へと通っています。なぜか不可思議なものたちに関わってしまうらしい保ですが、10年ほど前から店に住み込んでいる庭職人の啓介が実はその道のスペシャリストで・・・。

 『少年陰陽師』シリーズの著者が展開する、現代版の陰陽師の登場する連作短編集。
 人間ではない不可思議な者たちに「好かれる」保は、言ってみれば巻きこまれ型の主人公。そして、各編の事件の実質的な解決を担うのは、保のいうところ「おっかない木のスペシャリスト」である陰陽師の啓介というある意味良くある図式で、本作は成り立っています。
 ですが特徴的なのは、啓介が絶対的な力で全てを解明してくれるわけではないという各編のオチの付け方でしょう。自分の体験したことが何だったのかを訊ねる保に対し、啓介は「さぁ?」としか答えないで、必ずしも明確な解決を示してはくれません。ある意味でこの答えこそが、妖(あやかし)という存在の、説明しきれないあやふやな本質そのものでもあるのでしょう。