紅玉いづき 『あやかし飴屋の神隠し』

あやかし飴屋の神隠し (メディアワークス文庫)
 幼い頃に体験した事件以来、あやかしの姿をその目に映してしまう青年と、その手で何でも作りだしてしまう飴細工師の青年の二人が営む神社での屋台。
 人に憑いたあやかしを、「視る」ことの出来る者と「つくる」ことの出来る者との二人によってどうにかするという物語による連作短編集。1話進むごとに、二人の青年の過去にあった出来事が少しずつ浮かび上がり、最終的にはひとつながりの物語を構成する連作短編集という形式を、ごく自然にライトノベルという枠組みで生かしている作品であると言うことが出来るでしょう。
 また、神社、祭り、屋台、飴細工、あやかしという、和的なガジェットを生かしたファンタジーという意味では、これまでの著者の作品群とはまた異なる雰囲気を作り出すことにも成功しています。
 人とは異なることわりのあやかしが、人に添って存在していることでの歪みのようなものを修正するという枠組みでありながらも、あくまでも人vsあやかしという、単純な二元論では語り切れない関係性だからこその面白さがあるシリーズとして、今後の展開もあるのであれば楽しみな一作。