内藤了 『ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』

ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)
 驚異的な記憶力でもって目にした情報、耳にした言葉の全てを記憶する藤堂比奈子は、記憶した未解決事件と酷似した状況で死に至った事件現場を目にします。調べて行くうちに、過去の事件の容疑者らしい人物が、自身の犯した犯行と同じ状況で次々に死んでいるらしい不可解な事件が次々に起こっていることが明らかになります。

 第21回日本ホラー小説大賞読者賞受賞作。
 やや主人公の人物造形が生かし切れていない感も無きにしも非ずといった印象はあるものの、不可解な連続死の演出が魅力的であることや、殺人鬼の昏く歪んだ精神が垣間見える描写など、随所に惹きつけられる要素を持った作品であると言えるでしょう。
 犯人については、ある程度この手の作品に慣れた読者には中盤くらいで真相も見えてしまう部分もありますし、もう少し人間の精神の暗部へと掘り下げる方向性でも個人的には面白かった気はしますが、本作がシリーズ化を見越しての第一作としてという意味合いを持つことを思えば、その辺りは今後に続くシリーズの中で、時に読者を突き落とすような展開として期待しても面白いところかもしれません。