久住四季 『トリックスターズD』

トリックスターズD (メディアワークス文庫)
 日本で唯一の魔学の研究機関である城翠大学。そして大学の「推理小説研究会」では、世界で6人しかいない本物の魔術師である佐杏のゼミに所属するいみなちゃんが、この4月から起こった事件を題材に、『トリックスターズ』『トリックスターズL』という作品を発表していました。学園祭で、推理小説研究会のメンバーとともに、不可思議な力によって校舎に閉じ込められることになった主人公たちはどうなるのか。

 「まえがき」を読むことで、これまで過去2作品を読んできた読者は、ある程度の予測を念頭に置きながら物語を読み進めていくことになりますが、『トリックスターズ』シリーズが作中の人物によって書かれているという入れ子構造によって、本作は読者を上手く混乱させ、作者のトリックに引っかけているのかもしれません。物語のどこまでをメタフィクションとしているのか、そしてそのトリックを仕掛けているのかという疑心暗鬼とともに読むことで、尚更に読者を翻弄する上手さが本作にはあります。
 これまで読んできたシリーズ作品と、本作との間にある違和感は、謎が解明されることで意外な真相として読者にサプライズを与えることに成功していると言えるでしょう。