J・D・ロブ 『堕天使たちの聖域 イヴ&ローク39』

堕天使たちの聖域 イヴ&ローク39 (ヴィレッジブックス)
 再開発のための工事をはじめた古いビルから、十二人の少女の白骨化した遺骸が発見されます。15年も前に家出した子供らやストリート・チルドレンたちの保護施設が閉鎖されて以来、廃墟ビルだったこの場所から発見された少女たちに何が起こったのか。

 本作では、発見されてもナンバーで呼ぶしかなかった過去に起こった殺人の身元不明遺体の、一人一人に名前と顔を取り戻していくという捜査法が、これまでの長いシリーズの中でも異彩を放っていると言える一作。
 虐待を受け社会から見放された少女だった過去を持ち、これまでもシリーズで被害者女性らに自己を投影してきたイヴが警官として、同じように誰にも助けられることのなかった少女たちの味方となって捜査をするというコンセプトが生きていると言えます。
 また、このところ救いのない「悪」と対決してきたイヴたちが今回向き合う犯人が、これまでとはやや違った人物であることも特徴的な作品かもしれません。