西條奈加 『秋葉原先留交番ゆうれい付き』

秋葉原先留交番ゆうれい付き (角川文庫)

 イケメンだが女好きで何度も失敗している霊感持ちの警察官の向谷に連れられ、足だけの幽霊になってしまった季穂は秋葉原の先留交番へとやってくることになります。そしてオタクが高じて秋葉の交番に住みつくように勤務している権田と引合され、向谷と権田は足だけの季穂を「足子さん」と勝手に呼ぶようになります。実は九日前までこの街でメイドカフェの店員をしていた季穂は、何故死を迎えることになったのか。本人も覚えていないその死の真相を探るべく、向谷と権田は持ち込まれる様々な事件を解決する傍らで、真実を探っていきます。

 主人公が理不尽な死を迎えた後に始まる物語なので、必ずしもすっきりとはいかない部分もあるものの、連作短編集仕立てで進む物語は、各編で描かれる事件を解決していき、そして最終的には大きな謎である「足子さん」の死の真相へと辿り着くという形をとります。
 各編での心温まる物語、ほろ苦い真相などが、コミカルなやり取りの中で描かれる一作。
 良い意味で癖のあるキャラクターとともに、本作では秋葉原という街も主人公と言えるのかもしれません。