アリスン・ブレナン 『ザ・ハント』

ザ・ハント (集英社文庫)
 若い女性を監禁して暴行した挙句に、狩りの得物に見立ててハンティングをする"ブッチャー"と名付けられた残虐な連続殺人犯のもとから、ミランダは十二年前にただ一人生還します。親友を目の前で殺したこの殺人犯の悪夢から逃れるため、ミランダはFBI捜査官を志しますが、捜査官で当時恋人だったクインシー・ピーターソンの裏切りでFBIアカデミーを退学します。故郷のモンタナで山林救難活動をするミランダは、狩りを楽しむ残虐な連続殺人犯によって植え付けられたトラウマと、捜査のためにやってきた元恋人との間の葛藤に苦しみます。

 前作同様に、犯罪被害者としての心の傷を抱えつつ、自身を傷つけた殺人鬼に立ち向かう女性が主人公。前作に比べて人物の配置もすっきりとし、主人公がトラウマに苦しみつつもそれを克服しようとする姿も無理なく描かれるようになっているということは言えるでしょう。
 犯人に辿り着くまでの過程は、推理によって導かれるという要素は弱いものの、終盤での一気に犯人の実像を絞り込んで行く緊迫感に満ちたさまは、サスペンスとしての面白さを十分に楽しめるもの。
 犯人を殺人鬼として形成する過程もそれなりの説得力はあり、一定の読者を引き寄せる要素を美味く組み合わせたライトなサスペンスに仕上がっていると言えるでしょう。
 ただし、「どこかで読んだような」展開やガジェットの組み合わせ的な印象もぬぐえない面も否定できないのは事実かもしれません。