福田和代 『スクウェア』

スクウェア ?スクウェア ?

 刑事の三田が迷い込んだバー<スクウェア>。ある女性歌手を助けたことで、何やら事情がありげなバーテンのリュウと、常連客でリュウの知己でもある元ボクサーの宇多島の二人が、危険な世界に首を突っ込んでいることを知ることになります。

 これまでのいわゆる「お仕事小説」的な作風とはまた異なり、直球で格好の良いハードボイルドな空気が味わえる連作短編集。
 一般市民でありながらその領域を超える行動を明らかにしているリュウと宇多島を思って一線引いた位地に立つ三田との、どこか緊張感を孕みつつも不思議と相手を信頼し続ける微妙な関係ゆえの空気感が作品の味となっています。
 第一部ではあくまでも「刑事」である三田がリュウたちに対して一線を引いていますが、それが第二部では敢えてそのラインを超える三田の姿が、同僚刑事の姿を介して克明に示されることとなります。
 そしてこの第二部に入ると、リュウが何故<スクウェア>の"名無しのリュウ″と呼ばれるバーテンとなったかの過去が、丁寧に段階を踏んで描かれます。
 本作は、シリーズとしての連続性を持ちながら、各編が短編としてレベルの高い娯楽性を持った作品であり、ゲイバーのママといった脇役に至るまで、登場人物が実に魅力的なエンタメ作品と言えるでしょう。