真梨幸子 『5人のジュンコ』

5人のジュンコ
 連続結婚詐欺と、それに関わる連続不審死事件で逮捕された佐竹純子。容姿に恵まれたわけでもないのに、次々に男性を食い物にした彼女はどのような人物だったのか。佐竹純子の同級生で、彼女と深いかかわりがあったことで取材を受ける篠田「淳子」。この事件の取材をする売れっ子ジャーナリストのアシスタントである田辺「絢子」。佐竹純子の被害者の可能性がある男に多大な影響を与えた母親の「諄子」の事故死を語る女性。夫の上司の図々しい妻にフラストレーションを受けていることで、売れっ子ジャーナリストの久保田芽衣が嫌いな主婦の福留「順子」。同じ「ジュンコ」という名前で繋がってしまった登場人物たちの繰り広げる物語。

 エゴと嫉妬から生まれる悪意の連鎖が、一人の女性容疑者の周囲で起こった資産目当ての連続結婚詐欺と不審死事件を軸に、思わぬ展開をしていきます。
 ねっとりとまとわりつくような、女の嫌な部分を描くのを得意とする著者だけに、語り手たるそれぞれの女性たちも、彼女らにストレスを与える周りの女たちも、とにかく読んでいる者を食傷させるだけのねちっこさと厭らしさをこれでもかと見せつけてくる描写はさすがといったところ。
 ただ、最後のどんでん返しともいえるサプライズ要素が、サプライズとしての大きな驚きを持っていたかといえば微妙なところかも知れません。意外な真相よりも、女性たちの織りなす嫉妬と悪意の連鎖のインパクトの方が大き過ぎたために、この部分と他の大部分とが乖離してしまったかのような印象があるのは否めません。
 ですが、同じ「ジュンコ」という名前を持つがために、負の群像小説とでも言うべき物語のキャストになってしまう登場人物たちには引き込まれることでしょう。