高田崇史 『QED 鬼の城伝説』

QED 鬼の城伝説 (講談社ノベルス)

鬼の伝説が残り、「釜が唸るように鳴る」と凶事が起こるという言い伝えのある家で釜が鳴り、殺人事件が起こる。
このオープニングは文句なしに引っ張られました。
ただ、この「釜が鳴る」謎そのものは、物語の中盤で何となく予想が付いてしまうオチなのがちょっと残念ですね。
歴史や伝承の謎と事件との関わりについては、薀蓄のボリュームが押さえ気味だからか今回それほど無理は無かったかなという気がします。ただ、それだけに前半ほとんどタタルさんが登場しないこともあって、食い足りなさのようなものが残るかなという印象も。
前半での歴史案内は今回はもっぱら、昨年の龍馬暗殺で登場した奈々の妹の沙織が務めるのですが、やはり物足りなさがあります。
強引なくらい飛躍する論理で、ぐいぐい引っ張ってくれる面白さは後半の事件解決部分のみですし、このシリーズに慣れてしまったからなのか、驚くほどの突飛な説というのはもうありませんでしたしね。

ところで、各章のタイトルの頭文字A・T・C・G・Uは、やはりDNAの塩基に懸けてあるんですよね?
そういうところは面白いなと思います。
ただDNAの記憶…という持って行き方は個人的にはちょっと…という感じも。
むしろ事件の犯人の裏にあった悪意の存在の方が面白かったような気がします。