幕末から明治にかけての維新の時代を描いた時代小説ですね。
『狂乱廿四孝』といい、この著者の時代小説は安心して読めます。
とは言えラストは結局、誰も幸せにはなっていないんですよね。それがまた変に嘘臭くなくて、確かにその時代を生きた人間の実体を感じさせる、ある種の凄味があるんですけれども。
傳三郎と宇三郎が、言葉通り光と影として存在し、その宿命の果てに両者がひとつになる…というにはあまりにも凄まじい結末です。
ただ傳三郎の後を影として邪険にされながらも着いて行っていた宇三郎が、単に頭の足りない男から次第に凄みを増して、傳三郎と決別していく過程がとにかく読み応え十分でした。