[読了]東川篤哉 『交換殺人には向かない夜』

交換殺人には向かない夜

 まさかこう来るとは思わなかったというくらい上手く隠された伏線は、明らかにされてみれば物凄くフェアプレイそのもので。
 交換殺人というそれ自体トリックであるものを、最初から明らかにしてしまって、一体どういう方向へ落とすのかと思っていたのですが、見事に本格ミステリとしての落としどころへ綺麗に落としたという印象。
 浮気調査を依頼されて山奥の画家の家に潜入した鵜飼と朱美、以前の事件の縁で知り合い、知人の頼まれごとを引き受ける流平とさくら、 そして雪の日に起こった殺人事件に奔走する警察の三者の視点で、物語が展開して行きます。
 これらバラバラに進行する物語が一本になった時、一気にそれまでは巧妙に伏せられていた伏線が伏線として浮かび上がる直球の面白さがあります。