桜庭一樹 『ブルースカイ』

ブルースカイ

 「少女」という存在の絶望性は、この著者の作風の中では大きな位置付けをされているようですね。本書ではその辺は他の作品ほどストレートに打ち出されてはいませんが、やはり物語の中核にあるのは確かなようです。

「近代以前には、人々はこども時代からとつぜん大人になったんだ。なぜなら彼らには生活があり、働かなくてはならなかった。(中略)
それが近代になって学生である期間が伸び、人生において、こどもでも大人でもない不思議な時間が生まれた。そこで、幼女でも大人の女でもない"少女"という名のクリーチャーが生まれた。」
『ブルースカイ』p256

 これは作中の登場人物が語った言葉ですが、それによれば「少女」は中世と言う時代には存在しなかったと述べられます。なるほど、非常に面白いなと思いました。
 そうした意味合いでは、本書は桜庭一樹ファンには面白い1冊かもしれません。

 個人的には三部構成の各部のリンクが今ひとつ分かり難い部分があったこと、また、最終部の主人公で第一部・第二部においても重要な役割を果たす少女には今ひとつ共感できなかったこと、そして終わり方が後味の悪さすら残らない無味乾燥なものであったことで、全体の印象は今ひとつ。
 結局"世界のシステム"とそれを管理する者たちは何だったのか、ひいては作品全体の世界の全貌が最後まで不明瞭なまま終わっていることでどうも未消化な感じが残ってしまいます。
 もっともSFとしては全ての謎を明らかにする必要も無いですし、各部それぞれを別個に読んでいる分にはそれなりに面白かったです。