というわけで買って即読み。
小市民を目指す小鳩君と小山内さんのひと夏の物語なのですが、非常に上手い連作短編集となっていますね。
買って行ったケーキを、一つ多く食べてしまったことを小山内さんに隠すために知恵を巡らせる小鳩君、「狼」の本性を見せてしまった小山内さんに微笑ましさを感じさせつつ、それだけでは終わらない最終章といい、「秋季限定」「冬季限定」へと続くであろうこの先への期待を持たせるものとなっています。
ひとつひとつの短編の謎そのものの魅力と、その解決の合理性もさることながら、最後まで読んだ時に浮かび上がって来る1本の長編としての本作の連続性は、見事の一言に尽きます。
そう思って読み返してみれば、一つ一つにちゃんと気になるところがしっかり書かれているあたり、物語としても本格ミステリとしても実に良く出来ているとしか言いようがありません。
久々に、文句なしに楽しめたと思える1冊。
どうでもいいですが、夜だというのに甘いものが食べたくなりました。