第二次大戦後のスコットランド、ハイランド地方で、大戦中は従軍看護婦をしていたクレアは考古学者の夫フランクとともに過ごしているところから物語は始まります。ですが、とあるストーンサークルを訪れたクレアは、およそ200年前の18世紀にタイムスリップしてしまいます。
そこで出会ったのは、夫に瓜二つの男、ジョナサン・ランダルですが、彼は夫に瓜二つの外見にも関わらず内面は似ても似つかぬ暴力的な人間で、何とか逃げ出したクレアは負傷したジェイミーという青年を連れたスコットランド人の一団に出会います。
ジェイミーの怪我の治療をしたことから、ハイランド地方の豪族であるマッケンジー一族の庇護を受けることになったクレアですが、ランダルから自分を守る為にジェイミーと結婚することになります。
時代としてはまさにジャコバイトの乱のさなかであり、戦乱もクレアとジェイミーの間に波乱をもたらすことになるのですが、本書は決してスケールの大きな歴史大河小説ではなく、激動の時代の中に紛れ込んだ異邦人のクレアと彼女の夫となったジェイミーという、極めて小さな個人を描いた小説であると言えるでしょう。
ただ、時代風俗やスコットランドの風土をきっちりと踏まえていることで、物語に奥行きを持たせることに成功していることは評価すべき所でしょう。
ただ、クレアと共にもう一人の主人公と言うべきジェイミーに関しては、その生い立ちや境遇、過去などは苦悩とともに語られるものの、あくまでも「語られている」というレベルにとどまってしまっています。些か記述的過ぎる部分が多く、(所詮ロマンス小説と言ってしまえばそれまででしょうが)人物造詣における説得力という面では弱さを指摘出来るでしょう。
このシリーズの続きではクレアは何故か20世紀に戻ってたりと、色々と動きがあったりするようなので、回収されていない伏線がどこでどう回収されるのかを待ちたいと思います。