『ジオの聖戦』というオンラインゲームに熱中する若者がはびこる中、このゲームと現実との区別がつかなくなったことが原因なのではないかと思われる事件が相次いで起こります。ゲームの作者は、かつてネット依存で治療施設に入っていたという経歴があり、そこでの治療プログラムで使われた要素をゲームに盛り込んだのだと言います。そんな中で、死んだはずの人間=ゾンビを見かけたという情報をもとに、恵(ケイ)たちは調査をはじめますが、ゲーム関連の事件と、恵たちが調べている事件とのつながりが浮かび始めます。
シリーズ3作目にあたる本作では、ゾンビという題材とオンラインゲームというガジェットを結び付けたもの。
ハイチで実際に行われたゾンビの呪術に重要な役割を果たした毒物の中毒と、オンラインゲームを含めたネットの中毒性を上手く重ね合わせた物語の構造は、これまでの2作以上のものとなっていると言えるでしょう。
ですがその反面、それなりに緊迫した状況アリ、主人公らの失踪した父親関連での動きアリという巻であるにも関わらず、今ひとつ盛り上がりが薄く、何故か淡々と終わってしまったのは不思議と言えば不思議な一冊。特に、「よろず一夜」メンバーと、主人公の兄のいる警察との双方の動きを結び付けるという役割はあるものの、主人公の存在感は今ひとつ薄いようにも思われます。
ゾンビという素材の処理の仕方は現代的で無理がなく、それをゲームというガジェットで生かした辺りが面白いだけに、エンタメ的な盛り上がりが薄い点だけは残念な気がします。