上甲宣之 『JC科学捜査官 雛菊こまりと "ひとりかくれんぼ"殺人事件』

JC科学捜査官 雛菊こまりと
 深夜に赤い糸で人形を縛り、名前を付けたその人形相手にする「ひとりかくれんぼ」。この、交霊術のような儀式を行っていたと思われる最中に、超心理学の研究者が殺害されます。人形に乗り移った霊が殺人を犯したかのような状況、ガラスに写り込んだ霊のような顔など、心霊現象染みた事象の多い事件の真相とは。

 心霊現象と殺人事件を絡め、そこに介在するものを科学的視点から解き明かすという、ある種オーソドックスなテーマは実に魅力的に描かれます。ただ、本作で題材にしている「ひとりかくれんぼ」については、そのやり方など儀式そのものだけではなく、物語序盤で挿入されるエピソードについても、ほぼインターネット上の掲示板に投稿されたものをそのまま使っているものであることには賛否両論があってもおかしくはないように思います。
 また、キャラクターに関しては、果たして主人公が「女子中学生」である必然性があるのかという問題と、脇役たちの強い個性を活かしきれていたのかどうかどいう問題も指摘できるでしょう。
 そしてミステリとしての側面から言えば、ある程度知識があれば見抜けるトリックもありますが、そのトリックから犯人への繋げ方などは面白いですし、ひとつひとつの謎に対して丁寧なアプローチがされていると言えるでしょう。