ジェフリー・ディーヴァー 『ゴースト・スナイパー 上下』

ゴースト・スナイパー 上 (文春文庫)ゴースト・スナイパー 下 (文春文庫)

ニューヨーク州の地方検事補のナンス・ローレスが、バハマで殺害された反米活動家の事件の調査の協力を、リンカーン・ライムに求めてきます。この事件の黒幕は政府機関であり、陰謀によって市民が殺害されたことを告発しようとするナンス・ローレルにライムとサックスは協力することになりますが、彼らにもまた暗殺の手が伸びてきます。

政府機関による陰謀での殺人と、その証拠や証人の抹殺、さらには真相に近付こうとする者にも…という、失敗すれば陳腐になること間違いなしの物語ですが、そこは手堅いエンタメ作品として仕上げつつ、物語中でのリアリティも確保した落としどころになっているという印象。
ただその一方で、終盤までのスピード感というのはこれまでのシリーズ作品よりは控え目で、終盤に入って一気に物語が終わりへ向かって動くまでは、何故かやや盛り上がりに欠ける感じもあります。それは犯人との知恵比べや駆け引きに重点をおくと言うよりは、犯人そのもののフーダニットや事件の構造をいかに複雑にし、そこを暴き出す過程に重点をおくかという部分によるものかもしれません。