藤本ひとみ 『聖アントニウスの殺人』

 フランス革命前夜とでも言うべき時期のフランスを舞台としたサイコ・サスペンスですね。
 ストーリー展開もオチもまぁ、「いかにも」という感じはするのですが嫌いじゃないです。90年代初めに流行った快楽殺人モノの流れがそのままあるのですが、それ+歴史的な要素や社会をキッチリ描いていること、そして登場人物を藤本ひとみ的に読者に親しみやすく描いていることは魅力ですね。
 でも『聖ヨゼフの惨劇』の方がミステリとしても面白かったし、小説としても練れていたかなという気もします。