アガサ・クリスティ 『ゴルフ場殺人事件』

 どうもこのところクリスティしか読んでいません。そろそろ別のものを…と思っているうちに今月は終わりですね。

 クリスティにとっては三冊目の著作で、ポワロ物としては第2作にあたり、ヘイスティングスのロマンスなんて要素もあるのですが、やっぱり序盤から中盤にかけての盛り上がりは悪くはないんですがちょっと弱かったかなという印象。
 それというのも、推理の道筋のポイントは見えているものの、幾つかの要素が結びつくまでの物語の起伏が少ないのかなと。悪女は悪女としてもっと徹底的に書いてあれば面白かったのに、などと贅沢なことを考えてしまいます。
 また、最も大きな謎、つまり事件の構造そのものというのは終盤に差し掛かった割と早い時期で明かされてしまったんですよね。勿論犯人については最後まで焦らされはしますけど。

 ただ何といってもフランスの“猟犬”ジロー刑事とポワロの応酬は、いかにも典型的な「自尊心ばかり高くて証拠を集める能力に長けてはいても間抜けな警察」と「名探偵」の姿そのものなんですよね。
 ポワロ自身は終始自分の勝ちを露ほども疑わないというあたり、やっぱり好きですねぇ。