浅暮三文 『嘘猫』
猫と生活したことのある人なら、多分物凄く良く分かるんじゃないでしょうか。
勿論、猫のこと抜きにしても、青年期を終えて大人になってしまう切なさや、それは決してマイナスでは無いけれども失ってしまった何かを思う時に感じる物悲しさのようなものは伝わってくる物語です。
私小説であり青春小説で、どこかほろ苦くて切ない1冊でした。
島田荘司 『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』
久々に読む御手洗潔のシリーズですが、物凄く好きです。
物見遊山で世間話に御手洗と石岡の仕事場を訪ねて来た婦人の話から、そこに隠されていた事件を発掘し、鮮やかに解いて追って行く過程も良いですが、何と言ってもまさにクリスマスプレゼントに相応しい結末が綺麗です。
難を言えば、わざわざ別の章立てにしている序章に当たる部分がやや浮いている感もありますが。
犯人や自己中心的な欲求に従って事件をかき回す人たちも、どこか憎めない、そんなところもクリスマスに相応しい心温まる作品になっている所以に思えました。