麻耶雄嵩 『神様ゲーム』

神様ゲーム (ミステリーランド)

 講談社ミステリーランドのレーベルの謳い文句である「かつてこどもだったあなたと少年少女のための――」という部分で、麻耶雄嵩がどんなふうに子どもも読むことのできるミステリを書くのかと、非常に楽しみにしていた1冊です。
 読んでみると、子どもの視点で非常に分かりやすく描かれているものの、やっぱり麻耶作品ならではの味のある作品になっていますね。むしろジュブナイルの体裁を取っているからこそ、ブラックな部分が際立っていて、結末ではグロテスクさを伴う絶望感すら感じられます。その結末の落とし方といい、世界の崩壊感めいたものといい、どこをどうとっても麻耶作品。
 物語は、際立ったところの無い小学4年生の主人公、芳雄たちが町内で作っている探偵団で、最近問題になっている猫殺しの犯人を捕まえようという話になります。
 ここまでは、少年探偵団のノリで実にジュブナイルそのものの展開なのですが、この作品で際立っているのは「神様」を物語の中に入れ込んでしまったことでしょう。
 本格ミステリにおいては、全ての事象を見通す「神」たる存在を入れてしまうと、謎解きゲームの観点に立てば興ざめになりかねないのですが、本作でこの危険が回避されているのは、ひとえに主人公と「神様」を名乗る鈴木君との間で交わされる会話が、「神様ゲーム」というルールに則っているからでしょう。
 そして明らかになる事件の真相は、あまりにも衝撃的なのですが、さらに最後の最後でまた謎を投げかけたまま絶望だけを残して閉じる物語の結末は、グロテスクでありながらも畸形の美しさを見せる麻耶作品らしいものだと言えるでしょう。
 ただし、「かつてこどもだったあなた」向けではあっても、現在進行形で「少年少女」の読者向けかと言われると、少々難しいところです。
 ですが、ジュブナイルという体裁を逆手に取ったこの作品、実際のところミステリーランドというレーベルのターゲットが大人のミステリ読みであることを考えれば、このレーベルの魅力を最大限まで引き出したものだと言えるのかもしれません。