[読了]高田崇史 『QED神器封殺』

QED神器封殺

 前作の内容をかなり引っ張っているので、特に歴史の謎部分に関する知識には相当の補完が必要でした。如何せん日本神話の神々の名前がややこしいのがネックですね。また、やたらと神社の名前も出てくるのですが、それらに対して一応の解説はされるものの、膨大な情報量を一気にまくし立てられて非常に分かりづらい部分も今回は多かったように思います。
 全体的に歴史の影の部分の真相と言うのは、時の権力者によって怨霊にされた民という流れが定番になっているので、正直なところサプライズはあまり無いのですが、それでも最後の袋とじになっている部分のQEDはかなり大仕掛けだったなという感想。ただ、正直なところこじつけという印象も強いですし、シリーズ中で特に本書のあの部分を袋とじにするほどのものだったかと言えば、少々首を傾げる部分もあります。
 確かにあの部分を先に見てしまえば、本書の核となっている部分が一目瞭然ではあるのですが、それを言ったら東照宮だって同じじゃないかという気もするわけです。
 そして毎度のことながら、現実の殺人事件に関してはかなり苦しかったり無理があったり、むしろ無いほうがすっきりするのではないかという部分もありますが、何と言ってもその殺人トリックがトリックとしては弱いと感じてしまいます。
(以下ネタバレのため反転)
 少なくとも警察の科学捜査で、時間をかければ毒に関しては分かったんじゃないかとか言う以前に、毒の性質そのものをトリックと言ってしまうのは弱い気がします。

 もっとも、あくまでも本書のメインは三種の神器と神社に関わる謎なわけですから、その辺は瑣末時と言ってしまえばそれまででしょう。