[読了]エラリー・クイーン 『間違いの悲劇』

間違いの悲劇

 未完成のクイーンの作品――というだけで、何だか否が応でも期待は高まってしまうのですが、梗概だけのこの作品、是非きちんとした小説という形で読んでみたかったなというのが読了しての感想です。日本では有栖川有栖綾辻行人でノベライズを・・・という話もあったとかで、実現しなかったのが残念でなりません。
 ダネイがリーに向けて書いた梗概という形ではあるのですが、それでもリーという自分以外の読者の目を意識したためか、非常に臨場感溢れる筆致が伝わってくるような作品でした。
 何度もひっくり返る展開といい、最期に明らかになる動機の凄さといい、小説としては完成形ではないにも関わらず、のめり込んで読んでしまいました。

 収録されている他の中篇・短編に関しても、いかにもクィーンらしさに溢れていて満足の1冊です。