サリー・ビッセル 『ホワイトムーン』

ホワイトムーン
 『人狩りの森』の続編。
 判事が次々に殺害される事件の次の標的としてFBIが挙げたのは、主人公メアリーの恩師である女性判事。彼女を守るために故郷に再び戻ったメアリーですが…。
 物語の軸となるのは、この女性判事を守ろうとするメアリーと、彼女らに迫る元陸軍軍曹のワースの魔の手、ということなのですが、如何せん肝心な所でメアリーが隙だらけであっさり判事を攫わせてしまうのが「???」というところ。前作同様、敵方の登場人物の視点と交互に物語りは構成されているのですが、これがどうも今ひとつ読んだ時に散漫な印象を与えてしまった感があります。ワース側の視点での記述は、もう少し露出を抑えた方が、物語に緊迫感を持たせられるでしょうし、判事を次々に殺害している組織の目的と、この判事殺害という手段の結び付きが今ひとつ不明瞭な点も気になるところです。
 また、主人公の特性であるチェロキーというネイティブアメリカンという血筋の設定に関しては、本作ではほとんど生きていないと言わざるを得ません。物語の中の恋愛要素の面では、前作でよりを戻したはずの男がいつの間にか親密になっていた別の女性との比較という意味では多少の絡みもありますが、恋愛要素そのものがむしろ上手く物語りにはまっていないことを思うと、消化不良な部分が多いと言わざるを得ないでしょう。
 前作で持ち越されていた主人公メアリーの母親の殺人事件の謎が、上手い具合に絡んでおり、一応の結末は見られます。この点に関しては、シリーズの繋がりを、メアリーの母親の事件という糸で結ぶという著者の狙いは成功しているのでは無いでしょうか。