12年前に暴行され、心に傷を負った女性地方検事補のC・Jが法廷で対面した連続女性殺人鬼の声は、自分を暴行したレイプ犯のものだった――という本作、ジャンル的には警察小説でもあり、法定小説でもあると同時に、サイコ・ミステリ的な色彩も強い作品だと言えるでしょう。
残虐な犯行シーン、そして生きたまま心臓を抉り出された被害者の検死報告など、その手の描写の苦手な向きには相当辛いだろうほどの描写力は、本作が処女作だとは思えないほどのものでした。先の展開はある程度予想は付きますし、最後のどんでん返しも意外性という点から言えばさほどのサプライズもないのですが、描写力とリーダビリティの高さで一気に読ませられます。
特に心理劇という面では、絶対的有利と見えた裁判がひっくり返りそうになる局面などと絡み、非常に読み応えのあるものとなっていると言えるでしょう。
ただ、最後の大きな展開の辺りは、中盤までと比べると少々急ぎ過ぎた感があることも指摘せざるを得ません。また、C・Jを想う刑事のドミニクも、そのポジションのわりに書き込みは少なく、少々腑に落ちない点も残りますが、おそらくその辺りは続編に繋がっているのでしょう。
型通りの正義を貫く小説でもなく、またタイトルから連想されるような単なる報復劇でも終わらない辺りは非常に楽しめた1冊でした。