コーディ・マクファディン 『戦慄 上/下』

戦慄 上 (1) (ヴィレッジブックス F マ 9-3)戦慄 下 (3) (ヴィレッジブックス F マ 9-4)
 残忍な殺人者に家族を殺されたFBI特別捜査官のスモーキーと彼女の養女になったボニー、そしてかつての事件でターゲットにされたスモーキーの部下達もそれぞれ事件の傷が癒え始めた頃、新たな事件が起こります。一家の3人が惨殺された家でただ一人生存していた16歳の少女サラが、スモーキーと話したいと事件現場から要求してきます。サラによれば、彼女が6歳の時から彼女の人生につきまとってきた「ストレンジャー」という殺人者がこの犯行を起こしたのだと言います。サラの日記によって明らかになる彼女の過去とストレンジャーの恐るべき犯行に、スモーキーたちはチームをあげて挑むことになります。

 前作『傷痕』の事件の衝撃から徐々に立ち上がりつつあるスモーキーが、再び彼女らの前から理不尽に大切な人間を奪っていく殺人者と戦う本作ですが、本作でもスモーキーとサラの「被害者」の立場をシンクロさせることで、追い詰められた二人の悲壮な心情を無理なく表現することに成功しています。
 また、サラの手記は作中でかなりの割合を占めてはいるものの、リアルタイムでの事件の進捗具合と合わせて段階的に挿入したことによってそこだけが浮いてしまうこともなく、構成的にも成功していると言えるでしょう。
 犯人の執拗さ・異常さも良いアクセントになっており、最後まで一気に読ませるスピード感のあるサスペンスを楽しめました。
 最終章まではやや不足かと思われた犯人との直接対決という点でも、最後に実に上手い決着の付け方をしています。人物配置の良さと巧みな構成、そして異常な犯罪の組み合わせが前作以上に上手く行った作品だと言えます。