桜庭一樹 『本のおかわりもう一冊 桜庭一樹読書日記』

本のおかわりもう一冊 (桜庭一樹読書日記)
2010年8月〜2011年12月にかけての、作家・桜庭一樹の、「本」を巡る日常を綴ったもの。
作家として、あるいは一人の本好きとして、編集者や書店員らと交わす言葉で綴られる著者の「日記」は、綺麗にまとめられた書評やエッセイ、あるいは単なる読書記録とはまた違ったものとなっています。
何冊か同様の「読書日記」を出している著者ですが、本書においても特徴的なのは、本文の他に注釈として付けられるコメントにあると言えるでしょう。特に書籍の紹介では、単に本のあらすじや作者紹介をはしょってでもといった感じで感覚的に付けられるコメントが、逆にその書籍への興味をかき立てるものとなっています。
そして、著者の出世作でもある『GOSICK』のアニメ化やシリーズ完結など、作家として忙しい日々を送る中で、本書収録期間内に起こった東日本大震災は、仕事面以上に著者の「読書」に大きな影響を落としたことがうかがえます。
誰もが異常事態に浮足立って、日常を守ろうとしながらも非日常に翻弄されていた日々は、それまでは「ファンタジー」だった荒涼とした光景をリアルに読者に感じさせるなど、確かに「読者」の意識を変えるものだったのでしょう。