似鳥鶏 『ダチョウは軽車両に該当します』

ダチョウは軽車両に該当します (文春文庫)
 同僚が走るマラソン大会を観戦しに来ていた楓が丘動物園の飼育員である桃本と七森、そして獣医の鴇の三人ですが、突然コースに乱入してきたダチョウを捕獲する羽目になってしまいます。この騒動がきっかけで、どうやら獣医の鴇にストーカーが現れたらしく、桃本たちは鴇の以前の職場である製薬会社の研究所へと話を聞きに行くことになります。そして、ストーカーの正体を突き止められないまま、桃本と鴇は、鴇のかつての同僚で元彼の結城とともに何者かに拉致されてしまいます。

 シリーズ第2弾。本作では、女性獣医の鴇先生の周辺で起こるきな臭い出来事が、やがて殺人にまで発展します。
 前作に引き続き、相変わらずのキャラクターの濃さが、本作でも益々美味しい方向へと働いていると言えます。犯人の身勝手さと、それを生み出す社会構造の救いのない闇というべきものを描きながらも、それを重く感じさせず、それでいながら前作同様に、しっかりと読者に何かを感じさせるだけの訴求力を持った作品であると言えるでしょう。
 それぞれに個性的で謎めいた部分を持っているキャラクターの魅力には、次回作への期待も高まります。