宇佐見陶子のシリーズでもお馴染みの雅蘭堂の主人の越名ですが、この短編集では押しかけ女子高生の安積に振り回されたり、癖の強い兄が登場したりと、人間的に物凄く魅力と幅が加わっています。
同じように骨董を扱った宇佐見陶子のシリーズの短編集も出ているのですが、こちらはまたガラリと違った雰囲気が楽しめました。あちらは骨董を巡っての緊迫した駆け引きと騙しあい、その裏にある人間模様を追っていくのですが、雅蘭堂の主人はもっと穏やかに事件と骨董に相対しています。
骨董そのものに秘められた歴史や謂われも、薀蓄を語るというよりも物語が進むと共に自然に語られると言う幹事で、さり気なく入ってくる感じも好きです。