桜庭一樹 『GOSICKⅡ その罪は名もなき』

GOSICK〈2〉ゴシック・その罪は名もなき (富士見ミステリー文庫)

 前作に比べると、シリーズ作品としての安定を見せているせいか、詰め込みすぎの感もなく、非常にスムーズに読ませられてしまう1冊になっています。
 やはりメイントリックそのものの甘さと言うのは感じざるを得ない部分はあるものの、伏線の丁寧さや物語全体の構成の良さというのは評価すべき点であると思えます。ただし伏線があまりにもあからさまな部分はあって、演出次第ではもっと効果的に出来る可能性を潰してしまっているというマイナスも若干感じます。
 ストーリー全体はまぁ、ヴィクトリカの出生の秘密が徐々に明らかになって来て、主人公とヴィクトリカの未来での別れを暗示させるようなエピソードありと、この手の小説のお約束と言えばお約束な要素が、こちらは演出的には上手く配置されているなと言う印象。
 それと同時に、外界から隔絶された独特の因習を持つ村での現在と過去の事件という、まさに本格ミステリテイストな要素を上手く使っていて、ライトノベルとしてのリーダビリティと、本格ミステリの持つ空気というものが上手い具合に両立しているところが本作の面白いところでしょう。