辻村深月 『ぼくのメジャースプーン』

ぼくのメジャースプーン
 前半、とにかく読んでいてキツイ展開なのですが、それというのもディルレヴァンガー事件を彷彿とさせる事件が起こるから。ペットを飼っている身としては、やはりこの手のネタは苦手です。
 それでも最後まで読ませてしまう筆力は確実に持っている著者ですし、考え方や結末の付け方はそれなりに納得のいくものに纏まっていたと言えるでしょう。

 主人公の少年、そしてクラスメイトのふみちゃんのキャラクターに関して言えば、小学校4年生としてのリアリティには欠けているし子供らしくはないですが、地味で努力家で、けれども弱さを持ったふみちゃんだとか、そんなふみちゃんに好意を寄せる主人公の「ぼく」も、非常に好感の持てるものです。
 許せない罪を犯した相手にどんな復讐をするのか、その結末は綺麗に落ち着くべきところに落ち着いており、扱う内容は苦手であっても読後感は決して悪くは無かったです。
 相手の罪に対する罰を計る象徴としてのメジャースプーンの扱い方も、これ見よがしではなく、小さなエピソードの積み重ねが効果的な作品でした。全体としては嫌いじゃ無いですが、やはりああいう過剰にセンセーショナルな事件ではなくもっと違ったものを持ってきて欲しかったというのが個人的な感想。