J・D・ロブ 『雨のなかの待ち人―イヴ&ローク2』

雨のなかの待ち人―イヴ&ローク〈2〉
 やり手で有名な女性検事が雨の中で喉を切り裂かれて殺されるという、衝撃的な事件で幕開けをする本作もまた、前作でもそうであったように、犯人探しにおいて重要な要素を締めるのが、いわゆる心理捜査の手法です。快楽殺人の要素を多分に含む連続殺人が進行するにつれて、次々に明らかになる、登場人物たちの隠された一面など、様々なものが序所に明らかになる過程は、非常に上手い演出でもって描かれていると言えるでしょう。
 そして、被害者の家族の強い愛情ゆえに、担当捜査官であるイブに向けられる憎悪、そして家族愛というものに恵まれなかったがために、ロークに対しても一線を引こうとするし、むき出しにされる感情に傷付くイブ。ここでは主人公のトラウマと事件が非常に絶妙に結び付けられています。
 ロマンス小説としての要素と、サスペンス要素のバランスも良く、エンターテインメントとして魅せ方の上手さのある1作。
 ただ、犯人の意外性という点、それから犯人が殺人の「戦利品」を持ち帰るなどの要素が今ひとつ生かしきれていない点など、多少の弱さは感じられます。
 それでもラストまで起伏に富んだ展開は、欠点を補って余りあるものだと言えるでしょう。