パーネル・ホール 『犯人にされたくない』

犯人にされたくない
パーネル ホール Parnell Hall 田中 一江
早川書房 (1990/12)
売り上げランキング: 212,694
 前作で危険ばかりで冴えない探偵業とはオサラバしたはずの主人公ですが、息子が私立の幼稚園に入ってしまったためにまた弁護士の雇われ探偵を再開する羽目になってしまいます。
 治安の悪いスラムへ仕事に出掛ければ、たむろするジャンキーに怯えて写真も撮れないような小心物の主人公、スタンリー・ヘイスティングスが、息子の幼稚園の遊び相手の母親からの相談を受けた挙句、死体の第一発見者になってしまいます。知恵を働かせてこの窮地を逃れようとするのですが、ちょっとした手違いから、警察に疑われることになり…と、物語は非常にテンポ良く展開します。
 とにかく荒事が一切駄目な私立探偵という、少々情けない主人公の性格と、おろおろしながらも持ち前の正義感から、知恵を絞って事態を打開していく様が面白いシリーズです。フィリップ・マーロウのようにタフでもなければ格好よくもない、冴えない中年ではありますが、何でこれだけ頭が回るのにこんな生活しているんだろう?というキャラクターの良さがあります。
 安心して読める1冊。