ジリアン・ホフマン 『報復ふたたび』

報復ふたたび
 かつて自分を悪夢に追い込んだ犯人を、被害者の心臓を抉り取ることから名付けられた、連続殺人犯「キューピッド」として刑務所に送り込むことに成功してから3年。検事補のC・Jは次々に起こる腐敗警察官をターゲットにした殺人事件に不安を覚え始めます。それは、喉や舌をナイフで切られて殺される警察官のうちのほとんどが、3年前のキューピッド事件での秘密に関係する者だったからで――。

 前作でまだ事件が完全に解決していないことを匂わせる終わり方をしていたのですが、本作は完全に前作の事件を引き摺っているので、独立した1作としては厳しいところ。
 また、前作では綱渡りのようなC・Jの法廷シーンの緊迫感も見所のひとつでしたが、本作ではそれがなく、検察官としてのC・Jの活躍はあまり無かったと言えるでしょう。
 ただ、前作を掘り下げ、C・Jが果たした「報復」の代価を本作で浮き彫りにするという主題のひとつは、残酷なまでに描かれています。
 更には終盤で「キューピッド」事件も意外な広がりを見せ、次作への布石と言う意味では、おそらく本作はまずまずのものといったところ。
 ただし、本作の「ブラック・ジャケット」事件が持つべきスリリング感や犯人との駆け引きそのものの掘り下げが弱い為に、残念ながら前作と次作への繋ぎ的な位置づけになってしまった感もあります。