ノーラ・ロバーツ 『真夜中にささやく唇』

真夜中にささやく唇
 ラジオ局でDJを勤めるシーラの元に、ある晩電話でのリクエスト受付時間に「殺してやる」という、男の脅迫の電話がかかってきます。それから毎日のように繰り返されるこの嫌がらせに、ただならぬものを感じたシーラの上司は、大丈夫だと言い張るシーラを押し切って警察を呼びます。憤慨するシーラは担当刑事のボイド・フレッチャーに心を乱されますが、他人を立ち入らせたくないと頑なに思う彼女には警察官という職業に対しても過去に心の傷があり・・・。

 描き方によってはサスペンス色のもっと強い作品にもなったのでしょうが、ロマンス方面が主題であり、メインターゲットである女性読者層を考えれば、それなりにバランスは取れていると言えるかも知れません。
 ただそれにしても、実質的なボリュームが少ないこともあるのですが、その中でもどこにいるか分からない犯人が迫り来る恐怖というものに、もう少し分量を割いていれば説得力もあったのに、という気はします。また、犯人がシーラの周辺にその痕跡を残す過程が描かれず、脅迫という結果のみが記された辺りにも弱さを指摘できるでしょう。
 とりあえず一番気になったのは、今時はラジオのパーソナリティを「DJ」とは中々言わないのではないかという点でした。