高田崇史 『QED 河童伝説』

QED  河童伝説
 奈々たちが熊野で出会った神山禮子にストーカー行為を働いていた男が、河童の伝説の残る川で手首を切り落とされた死体となって発見されます。関係者が続け様に殺されるこの事件には、どのような裏があるのか。そして相馬野馬追祭を見物に来ていた奈々や祟たちは、河童と馬と猿の繋がり、そして河童伝承で歴史上から貶められた人々のことを解き明かそうとします。

 もはやこのシリーズで現代において起こる事件と、歴史や神話との繋がりは全く期待していませんが、前作『QED〜ventus〜御霊将門』からの引きがあっての本作には、現代で起こる事件の方にもそれなりの比重を期待していました。その意味では期待はある意味予想通りに裏切られ、いつも通りのQEDだったと言うことが出来るでしょう。
 そしてシリーズの肝である歴史の謎解きに関しても、タイトルの「河童伝説」を目にした時から予想出来る範囲を超えることのないものだったと言わざるを得ません。
 毎度の如くキーワードは製鉄技術であり、その筋書きに目新しいものもなく、既にマンネリから抜け出せなくなっている印象。言葉を繋いで隠された意味を探ろうとする手法も、初期の頃に比べて無理なこじつけ感が強く、その「真相」のインパクトも薄くなってしまった気がします。
 熊野編から新キャラクターを新たに加えてはいますが、今のところ彼らがシリーズに新しい流れを作っているというわけでもなく、長く続いたシリーズ特有のたるみがあると言わざるを得ないでしょう。
 あらゆる面でマンネリが目に付くものの、それでも新刊が出れば買ってしまうというのは、シリーズとしては安定したアベレージを保っていると言えなくもありませんが、そろそろ何か新しい流れが欲しいところです。