ジル・チャーチル 『クラスの動物園』

クラスの動物園
 隣に住む親友のシェリイの頼みで、彼女の高校の時の仲間が集まる際にもてなし役を手伝うことになったジェーンは、ひと癖もふた癖もあるシェリイの同級生の7人の女性に出会います。ですが、意味不明な悪戯のせいで寝不足のジェーンが一夜明けて見つけたのは、メンバーの一人の変わり果てた死体でした。

 夜中に何度も鳴る隠された目覚ましや、荒らされ、紛失してはすぐに見つかる関係者の持ち物など、不審な悪戯と殺人、さらには何かが引っかかる彼らの高校最後の日に自殺をした青年の存在など、本作ではミステリとして様々な要素がバランス良く配置されています。
 また、毎回の如く三人の子供の子育てをするジェーンの姿が生き生きと描かれており、子供たちとの会話日常の様々なもののなかから、最終的に事件の真相を連想していくという、このシリーズの持ち味も、非常に上手い具合に織り込まれています。ジェーンと息子のマイクの間で交わされる会話は、おそらく同窓会など本質のある一部分をズバリと言い当てており、上手いなと思わされました。さらにこの会話は、本作の中で繰り広げられる人間模様や、事件の根源の一つを端的に言い表し、登場人物たちに現実的な存在感を与える要素にもなっていると言えるでしょう。
 事件の最後でジェーンが気付く、ある人物のダイイングメッセージの真相も、主婦ならではという感覚でこのシリーズらしいものでした。