ヘザー・グレアム 『ひそやかな微笑み』 二見文庫

ひそやかな微笑み
 病で屋敷にこもっている往年の大女優であるアビーは、謎の人物からの脅迫を受けて娘のジェニファーを案じ、三番目の夫の息子のコナーにジェニファーを守ってほしいと言って、彼を呼び寄せます。最初は母親の言うことを妄想だと思っていた上に、元々良好な関係でもなかったジェニファーとコナーは互いに対立しますが、アビーの懸念を裏付けるかのように、ハリウッド女優がヒッチコックの映画になぞらえて殺されます。そして事件の鍵は、アビーが住んでいる館の、呪われた過去とも関係しているように思われますが・・・。

 モチーフを追及した殺人、魔術師とも言われた男の住んでいた館での過去の殺人、ヒッチコックの恐怖映画にこだわる怪しげな登場人物など、ミステリ色の強いガジェットが多く盛り込まれたサスペンス作品。それだけに、犯人に辿り着く手掛かりが作中であまり示されていないのは残念に思えます。
 全体的に、そこそこ起伏のあるストーリー、そこそこ癖のあるキャラクターという感じで、どこかで出てきたようなパーツパーツのつぎはぎのような印象も無いわけではありませんが、サスペンスとしてもそれなりにまとまった作品。