リンダ・O・ジョンストン 『ペット探偵3 目撃者は鳥カゴのなか』

目撃者は鳥カゴのなか [ペット探偵3] (ランダムハウス講談社 シ 2-3 ペット探偵 3)
 ペットシッターを続けつつ、ペットの案件を扱った法律問題の相談の仕事もし、さらに弁護士として新しい事務所での仕事を始めたケンドラですが、一緒に仕事をすることになった気難しい老弁護士が殺されてしまいます。犯行を目撃していたのは、被害者の弁護士の飼っていた情緒不安定なコンゴウインコのギギだけでした。被害者は、再開発のための不動産の買収絡みでの恨み、法律事務所を移る際のトラブル、また人間的な問題などから様々な人に恨まれていました。ですが、因縁の深い刑事のネッド・ノラレスに目を付けられたのは、ケンドラとの付き合いのあるセキュリティのエキスパートの私立探偵のジェフでした。

 シリーズ3作目を迎えて、第1作では謂れのない容疑をかけられて弁護士資格を停止させられたケンドラも、弁護士としての再スタートを本格的に始めていたり、一方でジェフの別れた元妻がケンドラとジェフの付き合いに影を落としたりと、シリーズ全体の物語の動きも中だるみすることなく読ませてくれる展開となっています。
 殺人事件の真相を追う傍らで、隣人を噛んだという犬を巡る訴訟問題の解決に乗り出したり巨額の遺産を相続する犬を巡った相続問題の相談をされたり、殺された弁護士の仕事を引き継いで不動産屋と地元住人たちとの間に起こっている問題に対処したり、さらには微妙にギクシャクするジェフとの付き合いに頭を悩ませたりと内容は盛りだくさんですが、煩雑な印象は全くなく、同時進行するいくつもの事象が無理なく盛り込まれていると言えるでしょう。
 同時に、ペットが事件の真相を解明する重要な鍵としての役割を果たしている点で、本作もシリーズの特徴を非常に上手く出しているものとなっています。
 ただし、犯人へ繋がる手掛かりや伏線は一般的に説得力に満ちたものばかりとも言えませんし、特に犯人の動機を明らかにする点では若干弱かった印象もあります。また、弁護士としての仕事の解決も、終盤に来ての突然全てがご都合主義で丸く収まってしまったという感じもないとは言えません。
 ですが、ケンドラが直面するいくつもの問題を同時進行にしたことで物語りに起伏を富ませ、さらにはその全てを綺麗に纏めた上手さは評価できるものでしょう。
 裏表紙のあらすじに関しては、若干ネタバレ気味なので要注意。