有川浩 『別冊 図書館戦争2』

別冊図書館戦争 2 (2)

 図書館戦争シリーズのスピンアウト第2弾。
「もしも過去に戻れるなら」という会話から、副隊長の緒方の、学生時代から付き合いのあった加代子との決定的な別離と、その後の人生を拓いた出来事を回想する短編、堂上と小牧の新人隊員であった頃の思い出話の短編の計2本。そして本編では纏まるまで行かなかった柴崎麻子と手塚の二人の関係が、悪質なストーカー事件を機に決着が着くまでを描いた中編が収録。
 別冊の1と比較するならば、前作は堂上と郁の二人というカップルのその後に焦点を当てた、良くも悪くもキャラクター小説に徹した部分が強かったのに対し、本作ではキャラクター小説の強みをそのままに、公的権力が表現の自由を奪うことへの問題提起など、本編で扱われていたテーマが別の人物の視点を借りて描かれている部分も大きいと言えます。
 また、柴崎&手塚の物語に関しては、「事件性」「物語性」が強く、カップルとして纏まるに至っていない二人だからこその物語であったと言うことも言えるかもしれません。
 本作をもってシリーズは終了ということらしいですが、シリーズ作品としてのテーマも、登場人物も、ほとんど全てを書き切ったという印象。その意味では、全てを綺麗に終わらせ過ぎたという点での「書き過ぎ」ということはあるかもしれませんが、これ以上書くことがないくらいにテーマも登場人物も掘り下げており、シリーズとしての完成度は高く評価できるでしょう。