「大先生」と呼ぶ水木しげるの5年来の希望で、大先生がかつて戦時中に過ごしたニューギニアの奥地を旅することになった一行ですが、文明の入り込めないジャングルの奥地での不自由、暑さ、マラリアの恐怖、ワニなどに加え、呪術や憑き物の恐ろしさを体感することになります。
テレビ番組の企画として、テレビクルーや現地のコーディネーターらと共に、水木しげると荒俣宏を中心としたメンバーが、セピック河の上流へと分け入って行きます。水木しげる言うところの「見えないものを無理矢理に見る力」に長けた土地の人たちの生み出すパワフルな彫刻には、精霊たちと隣り合わせで生活する彼らならではの価値観や習慣が透けて見え、それらに夢中になる水木しげるらの姿が本書では描かれます。
過酷な冒険旅行をするには高齢に思える水木しげるですが、そのおおらかさと大胆さ、時としてしたたかな姿はさすがに妖怪博士。
結果的にその土地の恐ろしい洗礼を受けてしまう一行の、過酷な道中を綴った一冊。
水木しげると荒俣宏だからこその旅行記として、過酷でありながらもユーモラスな読み物に仕上がっています。