J.K.ローリング 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 上/下』

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 ハリー・ポッターシリーズ第五巻 上下巻2冊セット(5)
 従兄弟のダズリーと一緒にいる時に、何故か人間の世界に現れた吸魂鬼に襲われたハリーは、やむなく魔法を使って敵を撃退します。ですが、そのことで魔法省から厳しい咎めを受けることになったハリーは、自分らの孤立する立場を自覚させられます。さらには復活したヴォルデモートとの戦いの一切を否定されるハリーの前に、ダンブルドアの勢力を削ぐために魔法省から送り込まれた魔女アンブリッジが、教師としてホグワーツに赴任します。

 シリーズ5作目。
 終盤でダンブルドア自身によって吐露されてはいますが、ダンブルドアの打つ手の悪さや脇の甘さが全てとも言える展開。
 これまでは直接的に手を下してくることの無かった敵が復活し、いよいよ――と思いきや、前作からの引きで魔法使い社会での勢力争いによって孤立するハリーの姿が延々と描かれることになります。
 キャラクター面でも、十代の半ばという微妙な年齢ならではの肥大する自我、それに反比例して現実に出来うることの少なさのギャップなど、それなりに読むべきポイントは多いのでしょうが、如何せん上下巻というボリュームの中での冗長さが先に立ってしまいます。
 実際の読者層がどうあれ、本来の児童書という趣旨から見れば、あまりにも鼻持ちならない主人公の姿にしろ、ストレスの多い物語展開にしろ、それはどうなんだろうかと思わざるを得ないところ。何にしろ、あれだけのボリュームが果たして本当に必要な巻だったのかと言えば、疑問を呈さねばなりません。
 また、翻訳者による解説が若干ネタバレ気味なところは注意。