J・D・ロブ 『イヴ&ローク20 赤いリボンの殺意』

赤いリボンの殺意 イヴ&ローク20 (ヴィレッジブックス)
 暴行され、公園で全裸に赤いリボンを巻かれ、死後に眼球を抉り取られている女性の死体が発見されます。そして、この事件を担当することになったイヴ・ダラスのもとに、事件の「ヴィジョン」を見たという霊能者のセリーナが協力を申し出てきました。彼女の身元を確認した末、迷いながらもセリーナに協力を求めるイヴですが、決定的に犯人を絞り込むことが出来ないうちに、次の事件が起こってしまいます。

 プロファイルを主な手段として犯人像を描き、物証や証言を取り入れながら操作網を狭めていくという捜査手法、そこにイヴのトラウマのエピソードを絡め、過去のトラウマを犯人を追うモチベーションへと変えていく主人公の姿と、本作もまた基本的な部分の多くは、これまでのパターンの踏襲であることは事実でしょう。
 ですがシリーズを重ねてきたことでの人間関係の構築や、そこで育まれる様々な絆など、シリーズ読者にとっては見どころもあり、一定の質の作品を継続して出し続ける作者の力量は評価すべき点。
 プロファイリングに頼り過ぎという部分でのリアリティの欠如に関しては、作品の舞台が未来であるというSF設定によって補完されており、本作でのまだ明らかではない犯人と捜査陣との攻防についても、作品世界におけるリアリティは確保されていたように思います。
 霊能者という要素を世界設定を支えにして受容している部分に関しても、それをラストに上手く繋げたことでサプライズを演出することに成功したといえるでしょう。
 やや、拾い忘れのように見える伏線も無きにしも非ずですが、概ね安定したクオリティを保ち続けており、シリーズ読者には安心して読める1作となっています。