ナンシー・アサートン 『ディミティおばさま旅に出る 優しい幽霊 2』

ディミティおばさま旅に出る (ランダムハウス講談社 ア 5-2 優しい幽霊 2)
 弁護士のビルと結婚したロリですが、結婚直後から仕事ばかりの夫とはすれ違いの毎日、ビルの親族の女性とも上手くいっているとは言えず、生まれも育ちも違う相手との結婚は失敗だったのではないかと悩み始めていました。夫婦仲を修復するために計画した、イギリスへの二度目の新婚旅行でも、出発直前にビルは仕事を優先してしまいます。せめてもの救いはやさしい義父のウィリスはイギリス旅行へ同行してくれたことですが、そんな彼が突然書置きを残して行方をくらましてしまいます。さらには、義父に同行しているらしい幽霊のディミティおばさまが残した書置きによると、彼が「過去と現在における一族の重要案件」を調査するために出かけたと言います。どうやら、かつてイギリスとアメリカに袂を分かった一族の元弁護士、ジェラルド・ウィリスに会いに行ったらしい義父をロリは追いますが、このジェラルドという人物の良からぬ噂を聞いてさらに心配の種が増します。

 前作でハッピーエンドと思いきや、仕事人間と化した夫のビルとのすれ違い、生まれ育った環境の違いから一族の中で疎外感を覚えるロリの姿は、意外なほどに現実的です。
 本作では、義父を追う旅の道連れとなる、12歳の少女ネルの存在が大きく、年齢に似合わずしっかりもので行動的な彼女のこまっしゃくれた様子が、何とも好印象。
 かつて一族を真っ二つにした事件が何だったのか、そして現在に至る問題が何なのかという謎が、それまで存在すら知らなかったイギリスの親族を訪ねるロリとネルの旅とともに明らかになってきます。そして、義父の足跡とディミティおばさまの書置きを追って、何人もの親族に会う過程の中に、ロリと夫のビルとがすれ違い、再び自分たちのあり方に気付くエピソードが重ねられます。
 本作においては、アメリカとイギリスに分かれた一族、父と息子、夫婦などの関係が上手い具合にオーバーラップすることで、面白くなっているということは言えるでしょう。